ベルカントを探求する
はじめまして、ソプラノのゆういです。このブログでは発声のことやオペラのアリアについてなど、歌に関することを中心に、出来るだけわかりやすく、真面目になりすぎずに発信していければと思っています。
Belcanto(ベルカント)とは何ぞや?
さて、Belcanto(ベルカント)とはイタリア語で"美しい歌"という意味ですが、歌い手にとっては、ベルカントというと歌唱法のことを指します。しかし、これが厄介なことに、ベルカント唱法とはこういったものである、と説明することは簡単ではありません。え?ブログ名を"ベルカントを探求する"と名付けておいて初っ端からそりゃないぜ、という感じですが、本当に大歌手であってもベルカントの価値観はそれぞれ違うものだったりします。それが故に、例えばメロッキ派と呼ばれる歌唱法の派閥(?)があったりします。まあ、音楽というのは好みに左右される部分も少なからずあることは確かなので、仕方がないと思います。ピアノにもロシア派とかドイツ派とかありますもんね。
では、おあとがよろしいようで。というわけにはいかないので、結局ベルカントとは一体何なのか、私なりの見解を述べます。
ベルカント唱法について確かなことは、マイクを使わなくても声が遠くまで響く歌唱法であるということです。そう、オペラって実はマイク使わないんですよね。もちろん野外コンサートとかそういった場合は使いますけど、劇場は基本的にマイクを通しません。オーケストラの生演奏に合わせて、マイクなしで一人で歌うということです。それでも客席までしっかりと届く声が必要ということですが、だからといって怒鳴り散らかしてオペラを一本通したら、喉はお陀仏になってしまいます。
おまたせしました。そこで登場するのが、我らがベルカント唱法さんというわけです。イタリア人はヨーロッパの中ではあまり身体が大きくないらしく、それでも負けない響く声を追求した結果たどり着いたのが、ベルカント唱法というわけです。私はイタリア人の先生からこのように聞きましたが、その先生は普通に180cmくらいあるということは置いておきましょう。
ということなので、ベルカント唱法において響きの豊かさは絶対です。低音から高音まで、言葉の母音が変わっても、ピアニッシモであっても、響きは決して落としてはいけません。これがめちゃくちゃ難しいんですよね。
マリア・カラスが残した言葉
さあ、ベルカント唱法の難しさに心が折れそうになった時はいつでも思い出してほしい、20世紀最高のソプラノ歌手とまで言われたマリア・カラスが残した言葉を紹介します。
"Nel canto, tutti, siamo studenti fino alla morte."
Maria Callas
歌に関して言えば、
私達はみんな死ぬまで、学生なのよ。
そう、私も学生、あなたも学生、みんな死ぬまで学生なのです。"私はマリア・カラス"という映画を観たことがあるのですが、インタビューか何かでカラスが答えていた言葉にも衝撃を受けました。
私は決して大歌手ではないわ。
それならもっと歌が上手いはずだもの。
え?それなら私はどうなるんですか?という疑問はとりあえず置いておいて、カラスのような紛れもなく大歌手であっても、謙虚に死ぬまで学生であると言える誠実さが、きっと彼女を大歌手であらしめたのでしょう。日々精進ですね。