ベルカントを探求する

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ロングトーンのコツとは?苦しみとはさようなら

ロングトーンというのは上の楽譜にあるように、一つの音を長く発声することです。だいたい曲が盛り上がるときや、曲の終わりなどで出てくることが多いですかね。まあ、たまには高音でピアニッシモという歌い手泣かせの場合もありますが。

それで、ロングトーンで日本人にあるあるなのが、音の最初は問題ないのに、伸ばしているうちに喉が苦しくなってきて、あ、もうやばい、という状況になり、ロングトーンの終わりはプツっと音が切れるように終わってしまう、ギリギリしのぎましたパターンです。特に本番は緊張も重なり、普段より喉は閉まりやすくなりますしね。

で、肝心なのは、じゃあどうしたらいいんですか?てことです。そう、誰もロングトーン怖い病を患ったまま生きていたくないのです。

ずばり、ロングトーンで喉が閉まってしまうのは、イメージとして音が同じ場所に停滞しているからです。いわゆるベルカントで歌う場合、フレーズは常に軌道に乗っている必要があります。軌道を先に描いて、その上をメロディが走るイメージです。こうすると途端に歌いやすくなりますし、息もきれいに流れます。ロングトーンも同じです。

だいたい陥りやすいのが、例えば、曲終わりのロングトーンだと大概が高音なので、ポジションをねらうことに集中しすぎて、さっき説明した軌道に乗せるのを忘れてしまうことです。はい、今から片足立ち10秒ね〜。というのと、今から10秒歩いてね〜。というのでは全然負荷が違いますよね。あ、なんのこっちゃと。

まあつまり、音の流れを作ることが大切です。音のポジションを捉えたら、その後はしっかり流してあげると、音楽性も生まれるし自分も楽だし、ロングトーンともウィンウィンの関係になれます。

改めて、音って流れていないと苦しくなるんですよね。音楽のスケールも小さくなってしまいます。マスケラとか目の奥とかポジションばっかり気にしていると、ついつい忘れてしまいがちなことです。そう、人生と同じですね(?)

結局のところ、歌うときに喉は使うのかい?

いやいや、そりゃあなた声帯が喉にあるんだから使うに決まってるじゃないの。てことではあるんですけど、あくまで意識の話をしております。意識として、歌うときに喉は使うのかい?と聞かれたら、答えは、「No!ダメ!絶対!」です。

わかりました。じゃあ歌う時は喉を使わないように、喉の力を抜いて歌うように意識すればいいんでしょ。と思ったらあーら不思議、喉を使わないように意識するということは、喉を意識していることになるんですね。ちょっとよくわからない?まあとにかく、喉を使わないようにするためには、喉のことは一旦忘れてしまいましょう。さようなら。

感覚としては、下の赤◯で囲っている、上顎から上の部分を使って歌うように意識するといいと思います。

で、そもそもなんで喉を使っちゃダメなんですか?て話ですけど、単純に喉に力が入るからです。歌っているときは、喉に力が入ってはいけません。Maria Callas(マリア・カラス)様もマスタークラスで、"Always open throat!!"=喉は常に開いとかんとあかん!!と仰っていました。喉を開く=喉に力が入っていないフリーな状態ということです。

そして、喉が開いていると声が飛びます。オペラなんて声が飛んでなんぼの世界ですからね。例えばメトロポリタン歌劇場みたいな大きい劇場で歌う人たちは、大概が飛ばし屋です。オペラ界の女王、Anna Netrebko(アンナ・ネトレプコ)も大の飛ばし屋です。あなたも飛ばし屋になりたければ、そう、喉を開くのです。てことで、参考までにこちらは10年前くらいのネトレプコです。

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さて、喉を開くためには、上顎から上を意識して歌うとさっきいいましたが、それって声のポジションの話なんですね。つまり、残念ながら一筋縄ではいかないのです。声のポジションが定まっていないと発声がうまくいかないので、声を無理に出そうとして喉に力が入ってきます。あ、喉に力が入ったらダメって言ったやん。喉に力が入ると声が飛ばなくなります。やっぱりここでも声のポジションが重要という話になりましたね。

呼吸とポジションはどちらが大切か

声楽を志していると必ずぶつかる壁、そう、それは呼吸とポジションですよね。呼吸についてはブレスコントロールとか横隔膜などというワードが飛び交い、ポジションについてはマスケラとか軟口蓋などというワードが飛び交います。

呼吸とポジションはどちらが大切か。

どちらがと言っておきながら、結論としてはどちらも大切です。が、私個人的にはポジションから見つけていく方が近道だと今のところは思っています。例えばみんなが必ず通る道、リコーダーの場合で考えてみると、どれだけ強靭な横隔膜で完璧なブレスコントロールを行ったとしても、指がしっかりと押さえられていなければ、綺麗な音は出ないですよね。そう、横隔膜の頑張りは水の泡です。反対に指がしっかりと押さえられていれば、呼吸の流し方はなんとなく、あ、こんな感じで吹けば音がちゃんと鳴るなという具合にわかってくると思います。

で、これは歌も同じだと思うのです。あ、例えがわかりにくいと。つまり、リコーダーでいうところの指が押さえられているかが、歌だとマスケラとかのポジションが定まっているか、ということになるわけです。そこがまだできていないのに、もっと横隔膜を使って、呼吸を流して、と言われてもこちとら困るんですよね。ということです。実際に声のポジションがハマれば呼吸もわかってくる、という説もあります。ちなみに、マスケラというのは、イタリア語で"仮面"という意味で、仮面舞踏会のこれを想像してください。

このマスクの位置がいわゆるマスケラです。ほとんどの歌い手はこの場所を意識して歌います。この位置に声がハマらないと、いくら横隔膜が使えていても、ただただ苦しいお歌の時間になってしまいます。そして、悲しいお知らせですが、日本語は話す時にマスケラにハマらない言語なのですよね。なので、我々日本語ネイティブスピーカーは、声のポジションには特に気を使わなければいけません。

呼吸のトレーニングも日々行っているし、歌っている時も横隔膜をちゃんと意識できているのに、音程が定まらない、声量が出ない、上昇メロディがきつい、などなど問題がある場合は、呼吸より声のポジションを意識して変えてみた方がいいかもしれないですね。

来日予定のオペラ歌手Nadine Sierraの発声について

さて、今年の6月、7月に英国ロイヤル・オペラハウスが来日しますが、その演目「リゴレット」にてジルダ役を演じるのが、Nadine Sierra(ネイディーン・シエラ)です。

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今回はシエラの演奏を参考にして、発声について考えていきたいと思いますが、その前に歌い手について書くときの私の思いとかはこちらにまとめているので、誤解のないように面倒でなければ確認してもらえると嬉しいです。

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さて本題にもどりまして、彼女は「リゴレット」のジルダ役をはじめ、「ランメルモールのルチア」のルチア役、「ロメオとジュリエット」のジュリエット役、「ラ・トラヴィアータ(椿姫)」のヴィオレッタ役などなど、ヒロインの中のヒロインを次々と演じる売れっ子で、メトロポリタン歌劇場をはじめ、世界各国の有名歌劇場で歌いまくっています。

1988年生まれということなのでオペラ界ではまだまだ若手で、今一番旬な人と言っても過言ではないかもしれません。

まあ、つべこべ言わずにまずは彼女の演奏を聴いてみましょう。今回の来日で上演される「リゴレット」より"Caro nome che il mio cor(愛しい人の名は)"をどうぞ。

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さあてどうでしょうか。こちらはMet(メトロポリタン歌劇場)の2018-19年シーズンの演奏だそうなので、今から5年ほど前ですね。

とりあえず、簡単に私が感じたことをいくつか挙げておきます。どの口が言うねんというのは置いておきましょう。

⚪︎高音でも力まずに伸びがある

⚪︎メロディが途切れない

⚫︎口が開きすぎる時がある

⚫︎プント(声の密度)が少し甘い

⚫︎トリルに癖がある

こんな感じでしょうか。私の中では、シエラの魅力はなんといっても、メロディが途切れないことだと思っています。ブレス(息つぎ)の回数も少なく、とても滑らかに音楽が進んでいきます。ここまでくると肺活量も関係するとは思いますが、息のコントロールがとても上手ということです。

そして、この伸びやかな歌声+高音+容姿+演技力(彼女は思いっきり演技するタイプ)によって、Nadine Sierra(ネイディーン・シエラ)という個性を確立しているわけです。

一方で、気になるのは口が開きすぎることでしょうか。そんなに口が開くなんてすごいと感心してしまうくらい彼女は口が開きます。私ならここまでいくと冗談抜きで顎が外れると思います。

割と最近の演奏で彼女の癖がよく出ているなと思ったのはこちら、2023年10月に公演の"ロメオとジュリエット"です。ジュリエットがロメオのことを思い、薬を飲むことを決意するシーンです。

ちなみに、イタリア語で"bis"とはアンコールのことで、歌手の演奏が素晴らしかった時に、自然と観客から"Bis! bis!"の連呼が沸き起こることがあります。こちらはそんな"bis"に彼女が応えた激アツの演奏です。

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どうですか。これだけ感情いっぱい全力で歌ってくれたら観客としては嬉しいですよね。

しかし、技術面だけに注目すると色々気づくことがあります。まず、さっきから言っている口の開きが大きいことによる弊害が色々出ています。なんとなくイメージがつくと思いますが、口の開きが大きいと、その分声が散りやすくなります。声の密度のことを声楽ではプントと言います。そして、声の響く箇所が顎に落ちやすくなります。顎に落ちるといいことは一つもなくて、息が保ちにくくなるし、ピッチ(音程)は低くなるし、トリルも不自然になるし、何より響きが一定でなくなります。

ちなみにトリルというのは簡単に説明すると、"ドレドレドレドレ…"とかを高速で行うことです。上のジュリエットだと、6:00くらいに行っているやつです。音楽が盛り上がるところで使われることが多いです。彼女のトリルはなんか違うなと思うことが多いです、私はね。

このジュリエットの演奏に関しては、感情が優先されているのが大きいと思いますが、とにかく口が開きすぎで、かなりわかりやすく響きが落ちる時があります。一番わかりやすいのは5:15くらいですかね。それで、響きが落ちたらどうするの?というと、また持ち上げないといけないのです。これをすると経験者はよくご存知かと思いますが、息が続かなくなります。なので、あ、そこ吸うの?というところでブレスしています。

ここまで色々言ってきたのですが、他の人も聴いてみるのがわかりやすいかもしれません。ということで、残念ながら映像はありませんが、ベルカントの女王と名高い、Mariella Devia(マリエッラ・デヴィーア)による1999年の演奏をどうぞ。完結に聴きたい場合は4:20から聴いてください。


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やっぱり聴くのが一番わかりやすいですね。デヴィーアはかなり技術がしっかりしたお方なので、余計にわかりやすいと思います。

あ、プントってこういうことか。響きを落とさないってこういうことか。てなりますよね。その声からは品格さえ感じられ、オペラとは声で演技する芸術なのだと改めて感じさせてくれます。ちなみに、彼女は声を響かせるための口の形や口の中の空間の作り方について、確固たるものがあったそうです。詳しくはわかりませんけども。

同じ曲を違う歌い手で聴き比べてみると、色々気づきがあったりしてとても勉強になります。それぞれの歌手の魅力もより感じられますよね。

Nadine Sierraの柔らかな歌声は、彼女の個性なのだということもより際立ちます。私個人の意見としては、彼女がこれからクセ強の歌い方に傾倒していかなければいいなと思っています。

 

オペラ歌手を批評することについて

批評と呼べるほど大したものではありませんけど、このブログでは有名オペラ歌手の動画を参考に、発声について考えたりする記事も書いていくつもりなのです。

それで、人前で演奏した経験がある人なら誰でもおわかりになると思いますが、それはそれは緊張します。世の中には緊張しない人もいるんですかね。しかしあのパヴァロッティでさえ緊張すると言っていたそうなので、みんな緊張して当然です。パヴァロッティはそうすると安心するそうで、よく白のハンカチを握りしめて歌っていました。

何が言いたいのかというと、人前での演奏は緊張はするし、観客に音楽を伝えるにはそれなりにパワーもいるし、心身ともに体力勝負なのです。なので、プロで活躍するオペラ歌手たちには本当にリスペクトしかありません。

それに歌手も人間ですから、いつもいつも完璧な演奏というわけにはいきません。歌い方にその人独特の癖があったりもします。

批評する場合はそういった完璧でない部分や癖を指摘することになりますが、それはその歌手を否定しているわけではなく、あくまで勉強のため、発声について考えることを目的にしています。

それに、実際の舞台で観客に感動してもらえるということは本当にすごいことで、ああ、まあまあなんじゃない?と思ってもらえるくらいで、その人は相当上手いレベルなのだと言われています。

なので、決してこの歌手は下手くそなんだとか思わないでくださいね。あくまでみんなリスペクト、みんなすごいという前提があることをお忘れのないようお願いします。(!)語彙力

結論、プロのオペラ歌手はみんなすごい。

もちろんプロに限らず人前で演奏する方はみんなリスペクトです。乾杯。

英国ロイヤル・オペラが来日

ロイヤルオペラ来日しますね。今からとても楽しみにしています。 

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演目はリゴレットトゥーランドットです。私はお金はFly Awayとなりますが、両方とも参戦します。

やはりソプラノに注目してしまうのですが、リゴレットはジルダ役がNadine Sierra(ネイディーン・シエラ)です。

彼女は間違いなく今をときめくソプラノで、有名歌劇場でバンバン歌いまくっています。若手で一番売れているといっても過言ではないでしょうね。その声は柔らかく、息はどこまで保つんですか?と驚くフレージングです。それに加えてアイコニックな容姿も人気の要因かなと思います。

続いて、トゥーランドットの表題役はSondra Radvanovsky(ソンドラ・ラドヴァノフスキー)です。トゥーランドットは日本人にはまず無理と言われているくらいドラマチック中のドラマチックソプラノが歌う役です。

が、彼女にとってトゥーランドットは一年間のスケジュールの中で声休めが出来る役だそうです。そんなバカなことがあるかと常人は驚きを隠せませんが、彼女にとってはそうなのですから仕方がありません。

それくらい強い声を持っています。個人的にはラドヴァノフスキーを生で聴けることをとても楽しみにしています。

歌うときに姿勢を意識していますか?

歌うときの姿勢は大切です。

顔見知りの整体師さんが言っていましたが、歌をされている方の姿勢を矯正したところ、その方は今まで苦労していた高音が楽に出るようになったと喜ばれていたそうです。

このように姿勢が悪いと自分本来のポテンシャルが生かされていない可能性が高いです。それはそれはもったいないですよね。

特に現代社会はスマホ、パソコン、ゲームなどなど、内側に縮こまる姿勢が増えていますので注意しなければいけません。

歌は身体が楽器なので、普段から少なくともストレッチはした方がいいです。大事な横隔膜も現代人はガチガチに固まっていることが多いそうです。この辺のストレッチの仕方はYouTubeなどで調べればたくさん出てきます。

で、肝心の歌うときの姿勢ですが、みなさん歌っているときに姿勢のことをあれやこれや考えることが出来ますか?少なくとも私にはそんな余裕はありません。

でも、一つだけいつもやっていることがあります。しかもめちゃくちゃ簡単なことです。尚且つ、プロスポーツ選手たちの中にもこの方法を実践している人もいます。

 

それはずばり、"◯を合わせる" です。

さて、ここからはわたしの超適当に書いた図をお届けしますね。

実は上の図は足です。直立したときに土踏まずは地面につきませんが、その地面についていない空間を上から見ると図のような円が浮かび上がります。

次に、少しわかりにくいかもしれませんが、頭蓋骨と背骨(首の骨)の繋ぎ目の部分は、頭蓋骨に穴が空いています。

図の赤◯部分の背骨に頭蓋骨が乗っている部分です。この部分を上から見ると頭蓋骨に丸い穴が空いているのです。

ここからが面白いのですが、この土踏まずの円と、頭蓋骨の円の大きさがちょうど同じくらいになるそうです。

もうなんとなく予想がつくかと思いますが、この円同士が重なっていると身体のバランスが保たれるのです。しかし脚は揃えている必要はなく、首幅くらいに開いているのが楽だと思います。脚を開いた分だけ円が大きくなるようなイメージで大丈夫です。

1. 脚を首幅に開く

2. 土踏まずの円に頭の円を乗せる

3. 乗ったと思たら完了

これだけでいいんです。例えばステージ袖でこれをやってから出ていくという感じですね。上手く乗っている状態だと、立ち姿も綺麗に見えるし呼吸も楽になります。

とても簡単なのに理にかなった方法なので、是非試してみてくださいね。

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